ニッコール千夜一夜物語第三十三夜 ピカイチL35AF・35mm F2.8
2007-10-01


今回のニッコール千夜一夜物語はコンパクトカメラのレンズの話だ。な〜んだ、とがっかりするのは早い。コンパクトカメラのレンズの話にもニッコール魂は宿っている。
ピカイチL35AF・35mm F2.8(ニッコール千夜一夜物語第三十三夜)

ところが、このカメラのレンズにはニッコールの名前がついていませんでした。そのせいもあって、当時の人々の中には、「あのレンズは、ニコンが作ったんではない。きっとよその設計だよ。」と、うわさをした人もいたようです。この手の風評は、意外と開発者を傷つけるものなのです。きっと当時の開発者も悔しい思いをしたに違い有りません。

でしょうなぁ。Ai AF Zoom Nikkor ED 70-300mm F4-5.6Dや AF Zoom Nikkor 70-300mm F4-5.6GをタムロンのOEMだという人が必ず出てくるのだが、レンズ構成図が似ているという以上の根拠は見たことがない。あるいは、Ai AF Nikkor ED 14mm F2.8DもタムロンのOEMだとかいう人がいる。たしかにレンズの構成は似ているのだが、それがこれらのレンズがタムロンのOEMだという根拠にはならない。たまたま似た構成になったのかもしれないし、ニコンのレンズ設計をタムロンが買ったのかもしれない。タムロンのがニコンのOEMの可能性だってある(笑)。第一、カタログに載っている構成図は結構適当だったりする(笑)し、流儀が違えば同じ構成も違った図に見えたりする。もちろん、タムロンのOEMの可能性が否定されたわけでもない。また、京セラ/ヤシカContaxのDistagon T* 2/28とPentaxのSMC Pentax 28mm F2もレンズ構成がよく似てるが、これはどちらかがどちらかに設計を売ったとどちらかを退職した人が主張しているとサンダー平山氏が何かの本で書いていたが、はっきりしない(Carl Zeissと旭光学の共同開発という説もある)。まあ、素人は適当なこといいますんで(笑)、めげずにいいレンズ設計してください>設計者様。

この断面図を見て、"おや ? これはテッサーではない !"と思った方は、かなり鋭いです。当時のコンパクトカメラの主流はテッサーを基本にしたものが多かったのです。しかし、若宮氏の選択は異なりました。このレンズは日本光学が長年慣れ親しんだゾナータイプで設計されています。ゾナータイプを選択することで、レンズのコンパクト化と大口径化を実現しています。また、他社製コンパクトカメラのレンズの焦点距離が、38mmが主流であったのに対し、若宮氏のレンズは本格的な広角、35mmを実現しています。開放時では若干周辺光量が少ないものの、開放F値がF2.8と明るく、ニコンのコンパクトカメラ1号機は、初めから本格的なレンズを搭載していたのです。

そうそう、38mmと35mmじゃ随分違うのだ。ニコンも少し前までのコンパクトデジタルカメラは広角端38mm相当だった。しかし、ピカイチL35AFのレンズはゾナー(Sonnar)タイプですぞ、ゾナー。ハァハァ(笑)。

今回の佐藤治夫氏の作例はコダクローム64プロ(PKR)で撮られているが、ニコンピカイチL35AFはISO64も使えるのか、いいなぁ。私はコンパクトカメラはコニカ現場監督28HGを愛用しているが、一番の不満点はコダクローム64が使えないことだ。現場監督はDX接点を一つ省略しているので、ISO25、50、100、200、400、800、1600、3200しか使えず、中間の感度のフィルムを装填すると近い低い方の感度に設定されてしまう。ISO64のコダクロームだとISO50にされてしまうのだ。感度の手動設定はできないのだ。これだと常時+1/3補正した状態と同じで、ネガならよいがリバーサルにはきつい。コニカはなんでこんなことするんだろう、と思ったものだ。ニコンピカイチL35AF、侮れないなぁ。いいなぁ。作例は彩度が低めだが、空の色がいかにもニッコールっぽい。この彩度もAi(非S)の頃のニッコールレンズの感じだ。ピカイチL35AFは1983年発売なので時期的にはAi-Sの時代だが、80年代初めのころのニッコールレンズの感じが出ていると思う。


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