結局は金持ち優遇の相続税増税でいいのか(森永卓郎氏:日経BP)
2008-07-16


今日はカメラネタでなくてすまん。久々に森永卓郎氏の記事を取り上げる。福田政権になってから紹介してなかったように思う。

さて、森永卓郎氏が、当たり前のことなのだがなかなか語られないことをはっきりと書いている。天晴れである。わたしは90年代後半以降の自民党の高所得者優遇策になぜ一般国民が怒らないのか不思議でならなかった。怒らないと言うよりも、むしり取られていることに気づかないから怒れないのだろうか。日経BPは、森永卓郎氏のこういう与党に不利な記事を堂々と載せているので偉い。
結局は金持ち優遇の相続税増税でいいのか(構造改革をどう生きるか第141回:森永卓郎氏:日経BP)

さて、そうした前置きをしたうえで確認したいのが、小泉内閣時代の2003年に実施された相続税率の大幅引き下げである。

このとき、最高税率が70%から50%へと大幅に引き下げられたが、この措置に対して、ほとんど批判が出なかったのは今もって不思議でならない。というのも、このときに引き下げの対象となったのは、遺産の総額が3億を超えている部分だけである。つまり、3億円以上の資産を残した大金持ちだけを優遇した税率引き下げだったのだ。

ところが、7月1日の朝日新聞に掲載された相続税の増税策を読んで驚いた。そこには「相続税は、課税最低額の引き下げ案が有力」と書かれていたのだ。ここまではっきりと書くということは、かなり確実なニュースソースがあるのだろう。

いずれにしても、相続税の税率を上げるのではなく、控除額の縮小による課税最低額の引き下げをもくろんでいるようなのである。

だが、相続税の控除額を減らすことは、大きな危険をはらんでいる。

確かに、ごく一般的なサラリーマンならば、控除額を4000〜5000万円まで引き下げても大きな問題はないかもしれない。

しかし、問題なのは零細自営業者である。控除額の引き下げによって、自営業者が片っ端からつぶれてしまう恐れがあるからだ。

例えば、大都市に立地している個人経営の商店や町工場の場合、事業用地にそこそこ高い評価がついており、8000万円を越えるケースもしばしばある。それを4000〜5000万円に引き下げてしまうと、ほとんどの自営業者が網にかかることになる。

しかし、そうした零細自営業者は、実際に相続に直面してもキャッシュを持っているわけではないから、相続税を支払うことができない。土地を売って相続税を払わざるをえなくなり、事業承継が困難になってしまうのだ。

自民党という政党がなにを目指して誰の利益のために存在しているのかをきちんと見極めよう。踏んでも蹴られても焼かれても(笑)付いていきます、というのはやめようよ。じゃ、自民党以外に政権を託せる政党があるのかといわれれば、私も民主党が最適とは言い難い。しかし、民主主義というのは相対的に妥当だと思う方向に徐々にシフトさせていくことでよりよい社会に近づいていくものだから(揺り戻しもある)、まずは現在の高所得者優遇策をとる自民党を否定して民主党なら民主党にやらせてみる。民主党が調子に乗って「悪政」を働いたら、自民党に戻すか共産党にシフトするか(最近は20〜30代の非正規労働者に支持がある)、国民の手で暴走しないように調節するのだ。それこそが民主主義だと思う。


続きを読む

[その他]

コメント(全50件)
※コメントの受付件数を超えているため、この記事にコメントすることができません。


記事を書く
powered by ASAHIネット