ニッコール千夜一夜物語第四十四夜 Nikkor-S Auto 50mm F1.4
2010-10-04


禺画像]

ニッコール千夜一夜物語第四十四夜は、Nikkor-S Auto 50mm F1.4だった。
第四十四夜 Nikkor-S Auto 50mm F1.4 - ニッコール千夜一夜物語 | ニコンイメージング

Nikkor-S Auto 50mm F1.4のマルチコーティング化されたNIKKOR-S・C Auto 50mm F1.4 を所有しているので興味深く読んだ。私のNIKKOR-S・C Auto 50mm F1.4はニコンの純正Ai改造をしたもので、絞り環や爪がAi仕様になっている。

記事によると、このレンズはニコンで最初に「ポット修正」を廃止したレンズらしい。

このレンズの開発には、もう一つエポックメイキングな出来事があった。ポット修正の廃止である。

その昔、光学ガラスは「ポット」と呼ばれる「るつぼ」を使って生産されていた。ガラスの原料を配合してポットに入れ、高温の釜で溶かしてガラスを作るのである。しかし当時は、同じガラスを溶解する場合、同じ屈折率になるように材料を調合するのだが、どうしてもばらつきが出てしまう。そこで設計者は、ポットの溶解ごとに変化した屈折率を元にシミュレーションを行っていた。そして、収差量や焦点距離が設計値から変化しないよう、曲率半径を変更する修正設計をその都度行っていたのである。この確認と修正設計を、社内では「ポット修正」と呼んでいた。ガラスの溶解ごとに設計をやり直すので、設計者にも生産を管理する現場にも大きな負荷であった。

時代が下り1960年代になると、ガラスの溶解量も増え、かつ生産ばらつきも格段に減少してきた。これを機会に、生産数量の多いこのレンズについては、各レンズのガラス材料の屈折率許容値(公差)を定め、許容値内のガラス材料だけを使うことにして、シミュレーションによる確認と曲率半径の変更作業を廃止したのである。このポット修正の廃止によって、レンズの生産性は格段に向上し、かつ安定した生産が可能となった。

この成功は、いわば手作りだったレンズの生産を、工業製品に転換させる大きな一歩であった。

それまでは出来上がったガラスの屈折率に合わせてレンズの曲率を毎回変えていたのか。それはすごいなぁ。

このレンズの描写は、記事によると以下のようだ。

このレンズの描写をひとことで言えば、「標準レンズらしい」ということだろうか。どの絞りでも破綻がなく、均質で良好な画が楽しめる。第四十夜で紹介した5.8cm F1.4に比べると球面収差が大きく、開放でのセンターのコントラストはやや劣るが、画面中間から周辺のコマフレアーが激減している分、画面全体で見るとより引き締まったシャープな画像に感じられる。

作例1は、F2に絞った夜景の写真である。F2では、DXセンサーの画面サイズでも周辺にややコマフレアーが認められる。フレアーはF2.8に絞り込むとさらに減少し、F4まで絞り込むと概ね消え、画面全体に渡って極めて切れのある描写が得られるだろう。

私は、古い設計のレンズなので開放ではへろへろの描写で絞るにつれて改善していくタイプなのかと思ってNIKKOR-S・C Auto 50mm F1.4買った。しかし、実際に使ってみると、絞り開放F1.4ではAi AF Nikkor 50mm F1.4Dよりも破綻していないように感じた。どちらかというとAi AF Nikkor 50mm F1.4Dの方が「絞りが効く」タイプだと思った。NIKKOR-S・C Auto 50mm F1.4の方が開放から絞っていった場合の変化は少ないように思った。
NIKKOR-S・C Auto 50mm F1.4 (Ai改)の作例 ― 2008年07月25日参照

なお、Nikkor-S Auto 50mm F1.4の製造期間は長いので(1962〜73年)、途中で改良されている可能性もある。NIKKOR-S・C Auto 50mm F1.4は1973〜74年だ。しかし、記事を見るとNIKKOR-S・C Auto 50mm F1.4だけでなく、Nikkor-S Auto 50mm F1.4の最初から絞りによる変化の少ない優秀な大口径レンズだったんだなぁ。なお、Cの付くマルチコーティングの方は、記事にある単層コート(シングルコート)のものほど気を使わなくてもいい感じだ。

これは絞り開放でへろへろなのが欲しければ、Nikkor-S Auto 5.8cm F1.4を手に入れるしかないのか。べつに開放でへろへろの必要はないのだが(笑)。


続きを読む

[ニコン]
[カメラ・写真]
[フィルム・銀塩]

コメント(全16件)
コメントをする


記事を書く
powered by ASAHIネット